◆第5回 「山根康児の千一夜物語 その1」 |
(平成24年8月1日掲載) |
今回のねどこは、NRCドリームインタビュー第4回「私の心の緑化―エジプトは人生のターニングポイント―」でご紹介しきれなかった裏話をお話いただきました。
題して「親子の絆は傷をも癒す―太陽崇拝流血事件―」です。
エジプトへは幾度か足を運ばれているようですが、これは、いつ頃のお話ですか?
1995年の夏。 エジプトへ農業技術指導で派遣されることが決まった私に、母親は、たった2ヶ月なのに息子が初めて手元から離れるのが『寂しい』と。 『じゃあ、夕方に太陽を拝んで。そしたらエジプトでは、ちょうど日が昇る頃に私が太陽を見ることになるから』と言って、方便だけど、2ヶ月間しのいでもらっていたのです。
壮大な距離を結ぶ太陽崇拝、素敵ですね!
そう! もうその頃から太陽崇拝を、エジプトで太陽崇拝(笑)。
何を思ったか日本でそういう方便を思いついて、母は沈む太陽を拝み、反対側から昇る太陽を私が拝むという「ひかり通信」みたいなね(笑)。
窓通信(Windows95)時代の幕開けにしては、なかなか画期的です(笑)。
そんなある日のこと、ホテルの屋上まで上がれるようになっていたから、「さぁ朝だ、日が昇ったし、太陽でも拝みに行こうかな」と部屋を出ました。
その日は凄く眠たくて、屋上へ昇っていく時に、フラフラしながら階段を昇って行ったら、いつも閉まっている戸が、なぜか階段の先にビーッと出ていて、それに気がつかずに、そのまま戸にガンッとぶつかりました。
そしたら、戸の下の木枠のところに釘が出ていて、どうやらそこに頭がグサッと刺さったみたいで…。
ガンッときて、グサッ!ですか!!
あれれ? 今なんか、グサッと音がした気がするものの、頭を木の枠で打っただけだと思ったから、またバンと戸を戻して、屋上までフラフラしながら登っていきました。
すると、額からツツーと冷たいものが…。
あの…その時点でかなり痛いはずですよね。
痛いのだけど、額からつたった何かが、ポチャッと下に落ちる音がしたことに気をとられて。
足元を見たら、なんだか血のりでいっぱいで「あれぇー!あれれ、おぉ~っ」とびっくりしていたら、額からさらに血がダラダラと出ていて、そのうち頭の上からダーッと。
なんだかプロレス流血戦、ひとりアブドーラ・ザ・ブッチャー状態?!
「何!!これ!あ、さっき頭を打った時に何か刺さったのかもしれないっ!!」と思い、もう一回その階段のところに戻って、木の枠をみると確かに釘が見事に飛び出ていて、そこに頭が刺さったのです。
頭にそっと触れたら、何か頭蓋骨がちと凹んでいる感じで。
眠気から一変、情況把握に努めたわけですね。
それで部屋に戻り、たまたまその日が金曜日だったからどこも休み。
一緒に行った設備担当者も休んでどこかに行っているだろうし、普通だったらスタッフが必ず朝、迎えにきてくれるけど、迎えにくる日じゃない。
とりあえず血がドクドク吹き出ている。
でも…なぜか人にバレては、いけないと思ったのです。 フラフラになりながらも(笑)。
日本人が血を出すのはみっともない、みたいな。
意外と冷静な、やまと魂も持ち合わせていたのですね。
何を思ったか、バスタオルを濡らして頭を抑えながら、もう一方の手にもバスタオルを握りしめて、まずドアをあけて階段に通じる廊下に落ちている血だまりを全部拭いてまわり、階段を回って拭いてまわりました。
全部証拠隠滅をし、バレないように、迷惑かけないようにと、必死で。
痛みを忘れて必死に清掃。
とにかく綺麗にふきとって、部屋に帰ってバスタオルをみたら、もう真っ赤。
大量の血が出たものだと思って、それ見ただけで気が遠くなりながらも、フラフラしながら頭を抑えて、ふーっと、寝てしまったみたいです。
誰にも発見されずに、一人で寝ていた? それ、気を失っていたのではないですか?
そう、朝日を拝みに行って、気がついたら夕方になりかかっていた。
目が覚めたから、あ…大丈夫だと思って。
「意識もあるし、血も止まっている!あぁ良かったぁ」と(笑)。
それから一応、お医者さんへは受診されたのですか?
いや、その後、医者にも行かず。 もう血が止まったから、大丈夫だと(笑)。
大丈夫って…その後、ズキズキするとか、傷が痛むとか、なかったのですか?
出血量は半端じゃなかったはずなのですけど、その後は幸い痛みもなく。
正しい止血方法をマスターした!ということで(笑)。
強いて言えば、今でも調べると、たぶん凹んでいると思うのですよ。 頭蓋骨のどこかが(笑)。
母なる太陽に見守られ、自然治癒したと思われる頭の傷。
以後、古傷として痛むこともないとか。
千一夜物語は、まだまだ続きがありそうです。 つづく
・山根康児インタビュー記事 |